僕らと彼らのルールブック

卯太と皐と節分おばけ

卯太と皐と節分おばけ

吉野朔実の「いたいけな瞳」だったと思うのだけど、
珈琲屋の看板に書かれていた「モカマタリ」という言葉を怖がる少年の話があった。
何だか得体が知れなくて怖い、と言うのだ。
子供の頃の恐怖って、実際そんな感触のものが多かったような気がする。

床屋で目をつむってシェービングクリームを塗られている男が怖かったり、
ねじれた形をしたマカロニが怖かったり、
テープレコーダーに書かれたドルビーマークが怖かったり、
ひいおじいさん(小さいおじいさんと呼ばれていた)の名前の漢字(丑之助)が怖かったり。

前述のモカマタリでは、家政婦のシラタマさんが、少年を連れて喫茶店に入り、モカマタリを注文し、「正体を知れば怖くない」ということを少年に教える。
実際、多くの臆病者がそうやって手さぐりで生き抜いてきているのだ。
何とも涙ぐましい。

 

河内愛里さんの「卯太と皐と節分おばけ」には、妖・怪異の決まり(ルール)を知っている子供・卯太と、知らない子供・皐が出てくる。
怯えて泣くのは皐だ。
決まりを守れば大丈夫だと卯太は言う。破れば危ない目にも遭う。

面白いことに、決まりを守っているのはヒトの方だけではなく、どうやら妖・怪異の方も同様に守っている。
彼らからしたら、そんなものはいつでも敗れるのかも知れないけれど、守っている。
となると、そもそもこれらの決まりは、一体どちらが先に言い出したことだろうか、などと詮索したくもなる。
こんなことを書くと、身近にいる彼らの機嫌を損ねてしまうかも知れないのでとても怖いのだけれど…
最初に「怖い」と泣いた臆病者はどちらなのか?

「卯太と皐と節分おばけ」に収められているのは2作品からは、彼らに対する作者なりの手さぐりが感じられる。
その感触は、あなたが自分の周囲にいる彼らに気付く時にもきっと役にたつはずだ。
臆病者の端くれとして、それだけは保証しよう。

 

卯太と皐と節分おばけ(河内愛里)
http://store.retro-biz.com/page_detail_1536.html

 

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